侍フットボール |
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「オーレ!ニッポン」のご協力で、昨日発表したコラムの改訂版を転載させていただきます。
ライバルとの大一番に勝つことができた。それもほぼゲームプラン通りに。 9日、地域リーグの北信越リーグ1部が開幕した。今季2部から昇格したガンズにとっては、強豪達との激しいバトルが待っている。その開幕戦で対戦したのが、昨季の王者長野エルザだ。 昨年10月末に2部優勝してからというもの、この日が来るまで運営面も含めてスタッフそれぞれにできるだけの準備を進めてきた。特にスポンサーの獲得など、経済的体力は昨年に比べて大きくアップした。 自分にできることといえば選手の見極めと新しい選手のスカウトで、そのためには情報収集と実際にプレーの確認が必要になる。さらにその次が本人とのコンタクトである。これには他のスタッフのルートも駆使し、幸いにして今季は非常に優秀な選手を獲得することができた。 具体的いえば、昨季甲府でプレーしていたMF土橋宏由樹、FW白尾秀人、さらに札幌でのプレー経験のあるMF奈良安剛といった3人の元Jリーガー。大学生では昨年関東大学リーグ2部のベストイレブンにも選ばれたGK大野恭稔、DF川上耕平など。その他にもバラエティーに富んだ選手を発掘し、獲得した。 ただ実際には昨年登録していた選手のうち21人が退団し、新たに13人を補強したことでチームとしての統一感をどのように持たせるかが課題であった。チームの核を見つける作業とでもいったらいいだろうか。それは監督だけではなく、スタッフ、そしてピッチで実際にプレーする選手自身の考え方(メンタリティー)に負う部分も大きい。具体的にいえばその中に『プロ意識』も含まれる。そのプロ意識とは何なのか、それを体言化してくれる選手がガンズにはいる。 今のガンズの中で土橋の存在感は際立っている。中盤でのバランサーとしての能力は非常に高い。甲府一筋でJリーグ138試合に出場したという実績はダテではない。加えて脂の乗り切った29歳という年齢。新加入ながらメンタリティも含めて彼のピッチ内外での貢献は大きい。 先日は冷え込みの厳しい早朝の松本駅前で、他のプロ選手らと一緒に、ホーム開幕戦のビラ配りの先頭に立った。さらに集客のための具体策も運営サイドに提示してくれた。 甲府でずっとプレーしてきただけに、クラブは経営危機の時期を必死の思いで乗り越え、そういうときに選手もどうしなければいけないかを皮膚感覚で学んできている。そしてその先頭に立って行動してきた。プロ化を始めたばかりのガンズにとって、彼から学ぶことが非常に多いのが現実だ。 またピッチではこんなことがあった。セットプレー練習を行っていたとき、メンバー編成上そのプレーに加わらなかった選手が、練習に目をやることもなく自分達だけでボールを蹴っていた。練習自体はそのメニューを終えて終了となったのだが、直後に「ちょっと待って」と選手全員を土橋が呼びとめた。 「さっきのセットプレー練習でプレーを見てない選手がいたけど、それでもし自分がプレーすることになったときに、実際にできるの?」 と選手に問いかけた。 自分がAチームであれ、Bチームであれ、起用される目処のあるなしに関わらず、ピッチに立つということがどういうことかを彼らに問うたのだ。答えは非を見るより明らか。今のままではできるはずはない。 確かにJリーグのレベルから考えれば、アマチュアのリーグはそんなものなのかもしれない。はっきりいえば、こういう当たり前のことができないからこそアマチュアなのだろう。しかしこれはほんのちょっとした事で改善できる。組織論でいうマインドの問題だ。そしてそれに気付き、言葉にできるかは、個人の資質に負う部分も大きい。土橋がプロの経験の中で、ピッチで感じ取り、身に付けてきたものがあるからこそ、その言葉に説得力はある。プロとアマチュアの差は技量だけの差ではない。むしろこうした甘えを許さない姿勢こそ、その決定的な差だといえる。 「松本に骨を埋めるためにきた」と彼はいう。「本当にこのチームでもう一度Jリーグの舞台でプレーしたい」とも。 強化担当者として、ひとりの選手についてのみ言及することがどうかというジレンマを抱えながらこの原稿を書いている。しかしあえて今回は書くことにした。プロとしての基準がどこにあるのか、それが何なのかを感じ取ろうとしている選手、スタッフがどれだけいるだろう。自分も含めてまだまだ少ないのが現実だ。それを分かってもらいたいからだ。 北信越リーグ開幕戦。ディフェンディング・チャンピオン長野エルザとのアウェイ戦。昨秋の全国大会ではJFLを目指し、強豪相手に渡り合った非常にレベルの高いチームだ。彼らはガンズと同様、近い将来のJリーグを掲げている。2部から昇格してきたばかりの我々にとっては、胸を借りる戦いといってもいい。 長野対松本という昔から残る根強い地域感情もあって、スタンドは地域リーグとは思えないほどの盛り上がりを見せた。観客は2020人を数え、取材に訪れたメディアも多数。まさに信州ダービーの様相だった。 気象条件は快晴だったが、ホームゴール裏からアウェイゴール裏に強風が吹き続けていた。だからどう戦うべきか。ゲームプランは、前半は風下を選ぶことから始まった・・・。そして『蹴る』。 確かに『つなぐ』サッカーのほうが、『蹴る』サッカーよりも質的には高い。しかしたった14試合のリーグ戦。一試合を落とせば、そのダメージは計り知れない。しかもこの試合は当面の敵との対戦。勝ち点6の重みがある。俗に『蹴る』サッカーはローリスク、ハイリターン。しかしサッカーとしては面白みがない(筆者もその通りだと思う)。だがシチュエーションによって、あえてそれを選択するという方法もある。ましてガンズはチャレンジャーの立場。昨季終了からの5ヶ月、綿密に情報収集をし、戦略を練ってきた。現時点の集大成としてこの試合をどう戦うか。つなぐこともできるがそれをしないことでもきる。この試合では『蹴る』ことに迷いはなかった。 前半は風下である程度ディフェンシブに戦い、0-0で折り返せばいい。後半に入れば風上を利して足の止まった相手を一気に攻め立てる、というプランだった。そしてそれがはまった。 初戦の緊張感からか、立ち上がりの固さという問題は残ったが、結果的に前半23分に今季新加入で松本出身のリ・ボンイルの強烈なミドルが炸裂し先制。試合の主導権を奪うことに成功。 さらに後半立ち上がり3分に白尾が相手DFラインの裏に走り、追加点。その後はつなぐサッカーも織り交ぜ、強豪相手に付け入る隙を与えなかった。 「とりあえずひとつ勝ちましたよ。必ず全国行きましょう!」 土橋が筆者の姿を見つけ、駆け寄ってきた。土橋だけではない、淡々としている選手、喜びを爆発させる選手、表現の方法はそれぞれでも選手たちの思いも同じだろう。 まだまだチームには足りないものが多い。実力だけとってもガンズは決して北信越で突出した存在ではない。さらに経営サイドのプロ化という大きな課題がある。 ガンズはチャレンジャーだ。だからこそ何をしなくてはいけないのか、それを考え、行動し、1ミリでも前に行くこと。今すべきはそれだ。そして成果はその積み重ねからしか生まれないのだ。 サポーター、スポンサー、そして何よりクラブを支えていただいている地域社会の思いが伝わってくる。この日、松本から駆けつけていただいたサポーターの数は500人を上回るだろう。その想いに選手もスタッフも結果で応えていこうと思う。 勿論入場無料! 快く転載を許可いただいたオーレ!ニッポン小泉編集長ならびに、編集部の皆様に感謝します。
by harukamiho
| 2006-04-11 10:41
| コラム
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